自分が好きで入った道ですからね、
人に勧められてやっているわけじゃない。
そりゃあ波乱万丈(はらんばんじょう)の人生ではあったんです。
でも、やっぱり周りの人たちに支えられた面がずいぶんあるんですよ。
今、77歳ですが、
高座まで自分の足で歩いて行って喋(しゃべ)れる体力と気力さえあれば生涯現役でいたいと思っています。
だって私たちに終点、到達点っていうのはないんですもん。
私たちが到達する時はいつか、目を瞑(つむ)った時ですよね。
これはあらゆる人に言えることじゃないでしょうか。
だから「もう俺は頂上へ登っちゃったんだ」と思っているやつは絶対にダメだと思う。
転がる一方ですよ。
中学三年の11月に、卒業を待ちきれなくて、
古今亭今輔師匠のもとに飛び込んじゃったんです。
その頃、今輔師匠からこう言われたことがあるんです。
「苦労しなさい。ただ、何年かして振り返ってみた時に、
その苦労を笑い話にできるように努力しなさい」
苦労の壁をどう乗り越えるか、どう突き破るか、
それも一つの勉強だと。
若い時には師匠の言葉の真意は分かりませんでしたけど、
いまになってみると大変有り難い言葉だと思います。
私が大切にしている言葉に「芸は人なり」というのがあります。
薄情な人間には薄情な芸、嫌らしい人間には嫌らしい芸しかできないんです。
だから、なるたけ清楚(せいそ)な、正直な人間にならなきゃダメだって。
それが芸に出てくる。
"落語の道に終わりなし。目を瞑る時まで磨き続ける"
落語芸術協会会長 桂歌丸氏の『月刊致知 2014年4月号』致知出版社より抜粋
言い換えれば「仕事は人なリ」。
人間性が仕事に出てくるということではないでしょうか。
自分磨きも大切ですね。