「人を指させば、他の3本の指は自分を指している」
入社三年目の時に、地元の経営者の集まりに参加した時のことです。
「経営者とは」という議題で、経営者にとって一番大切なものは何かと聞かれたので、
私は「危機感です」と答えたんです。
そして会社が潰れるという噂が流れると銀行はお金を貸してくれない、
取引先は商品を卸してくれない、従業員も逃げていくから、いざとなれば誰も助けてくれませんよね、
という調子で私は文句ばっかり言い始めたんです。
そうしたら先輩経営者が「加治君、君はよう頑張ったな」と労(ねぎら)いの言葉とともに
「よう頑張ったけどな、君は相手が悪い時どういうふうに指を指す」と聞いてきました。
実際に指を指して見せると、
「加治君よく見てごらん。人差し指は相手に向いているけど、三本の指は自分を指していないか」と。
「相手に非があった時、確かに相手も悪いかもしれないけど、
自分自身も悪いところが三つあるから考えてごらん、と神様が言っているよ」
とおっしゃったんです。
そしてその方がじっと私を見据えて
「そんな潰れそうな会社でも商品を卸してくれる人や働いてくださる人、
そういういい人たちが君の目の前にはたくさんいるのに、
目の前の悪いものばかりしかみてないだろう貴様は!」
と、最後はもう怒鳴り声でした。
その日はですね、もう一日中涙が止まりませんでした。
これ何の涙かっていうと、嬉し涙だったんですよ。
そして、この時に
私の心の中に「感謝」という二文字の柱がドンと打ち立てられたんです。
日本で一番視察が多いスーパーとして話題を集めている、福岡県を地盤に展開するハローデイだ。
ハローデイ社長、
「すべては縁ある人と感動するために」
『月刊致知 2014年5月号』(致知出版社)より抜粋
事実は一つ、解釈は無数。
違う解釈ができるとすると、どんなふうに考えられるだろうか?