運の良い人、悪い人、という考え方があります。
「運」というと、占いのたぐいを連想させ、およそ非科学的な印象を与えるかもしれません。
しかしいま、「運」というというものの正体を科学的アプローチで解明しようとする試みが進んでいます。
近年、京都大学の藤井聡教授が、心理学的アプローチから「運」の正体に迫(せま)った、
「他人に配慮できる人は運がよい」という論文を発表しました。
これは、「認知的焦点化理論」というものを用いた研究です。
「認知的焦点化理論」とは、かんたんに言えば、
「人が心の奥底で何に焦点を当てているか?」によって、
その人の運のよし悪しまでが決まってくる、という考え方です。
藤井教授の研究で、
「利己的な傾向を持つ人々の方が、そうでない人々よりも、主観的な幸福感が低い」
ということが明らかになりました。
利己的な人ほど、自分は幸福でないと思ったり、周囲の人々に比べて不幸だと思う傾向が強い、という結果が示されたのです。
利己的で自分のことしか考えず、目先の損得にしか関心がない人は、配慮範囲が狭い人です。
逆に、他人や遠い将来のことまで思いを馳せることができる人は、配慮範囲が広くなります。
藤井教授の研究によれば、配慮範囲の狭い利己的な人は、ある程度までは効率よく成果をあげられるものの、
目先のことにとらわれて協力的な人間関係を築けないため、総合的にみてみると、
幸福感の感じられない損失が多い人生となる、とのことです。
逆に、配慮範囲の広い利他的な志向を持つ人は、よい人間関係を持続的に築けるため、
自分の周囲に盤石(ばんじゃく)なネットワークをつくることができます。
言いかえれば、周囲のみんながこぞってその人を助けてくれるわけです。
こうしてみると、
よりたくさんの範囲の人、より遠い未来のことまで配慮できる人ほど運がよい、
というのも、ごくあたりまえのことに思えてきます。
脳科学者、中野信子氏の『脳科学からみた「祈り」』(潮出版社)より抜粋
科学で「運」を解明、おもしろいですね。
運を管理する「ラックマネージメント」という考え方もあります。