ある夜、まだ身分が低いころの秀吉の家に、朋友(ほうゆう)が集まった。
男たちは、酒を酌(く)み交わし、青雲(せいうん)の志をぶつける。
「一国一城の主(あるじ)になってみせる」
「いや、百万石(ひゃくまんごく)の大名だ」
「男と生まれたからには、天下を取ってみたい」皆、意気盛んである。
さて、秀吉の番になった。
「俺は信長様にお仕えし、苦労に苦労を重ね、
今、ようやく三百石の俸禄(ほうろく)を頂く身になった。
あと三百石、加算してもらえるよう、がんばりたい」
あまりにも小さな夢だったので、朋友たちは、どっと笑った。
秀吉は、皆を制して言った。
「おまえらは、所詮(しょせん)、かなわぬことばかり言っている。
地に足のついていない目的だから、あせって空回りするだけだ。
志を得ない愚痴や、不平、不満ばかり言うようになったら、もう向上はない。
だが俺は、手が届くことを言っている。
今、自分が頂いている仕事に全力を尽くせば、
必ず認められる一つの目的が成就したら、その喜びをもとに、また、次の仕事に集中していく。
一歩一歩、着実に積み重ねていけば、予想以上の結果が得られるだろう」
木村耕一氏の『こころの朝 自分らしく自分の夢を持って生きれば、道は開けてゆく』(1万年堂出版)より抜粋
「大きな夢を」という話も、よく聞きます。
大きな夢は、小さなことの積み重ねで叶うのでしょう。
目の前のことに一生懸命向かっていくことが、一番大切ではないでしょうか。