〈失敗はごまかすよりも、正直に言ってしまうほうがいい〉
自分自身に後ろめたい思いがある時には、「正直に報告しなければならない」という気持ちに、どうしてもブレーキがかかってしまうものです。
「正直に報告してしまったら、きっとひどく叱られるだろう。
罰を受けることになるかもしれない」という恐怖心が働いてしまうのでしょう。
自分の非を隠そうと思っても隠しおおせるはずはありません。
いずれ発覚してしまいます。
次のような昔話があります。
江戸時代のことです。武蔵国忍(おし)藩(現在の埼玉県)に松平信綱という殿様がいました。
信綱は子供の時に、江戸城内の屋敷の中で遊んでいる時に、過って大切な屏風(びょうぶ)を破ってしまいました。
そこへたまたま徳川将軍が通りかかりました。
将軍は「この屏風を破ったのは誰だ」と、ひどく怒り出しました。
信綱は正直に答えればもっと怒られるだろうと恐れましたが、勇気を出して「私がやりました」と告白しました。
すると将軍は怒った顔を和らげて、「よくぞ正直に申した。立派なやつだ」と、信綱をほめたのです。
それ以降、信綱に目をかけ、出世の面倒を見てやったのです。
現代のビジネス社会でも、不祥事を起こしたものの、それを公表するのが遅れたり、世間から隠そうとしたために激しく非難される経営幹部がいます。
そのために信用を失って、会社の業績が傾いてしまった、というニュースもよく聞きます。
もしもっと正直に、もっと早く、自分の非を世間に公表していたら、損害も少なくて済んだのではないかと思わせる事件も少なくはありません。
ミスや失敗は正直に早く報告しましょう。
それが信用を得る方策です。
植西聰氏の『心にブレーキをかけない生き方』PHP研究所
誠実が信用を生むのでしょう。
忍藩とは、そう今の行田市です。