今や世界中のリーダーが愛読している『孫子の兵法』。
この書こそ無駄な戦いを避ける極意の集大成だ。
その中に、
「敵の10倍の戦力であれば、敵を包囲すべきである。
5倍の戦力であれば、敵軍を攻撃せよ」とある。
戦いの場では相手の5倍の力がついて初めて好戦的になってもいい。
勝ち目のない戦いには臨まず、圧倒的に勝てる態勢を作って、
できたら戦わずに勝つのだ。
これが実践されているのが、実は動物の世界である。
彼らの世界では強い者が生き残るという考えがある。
しかし、これは大きな間違いだ。
正しくは、「環境に柔軟に対応する者」が生き残る。
同じ種の中で体が大きく戦闘的な者が生き残るわけではないのだ。
コオロギを使った実験で興味深いのが、臆病で戦いを避ける者が、
戦闘的な者より生き残る確率が高いこと。
むやみやたらに戦わず、
体力を温存して、健康体を保っているものが生き残り、
メスとの出会いをつかみとり、子孫を残す可能性が残されているのだ。
縄張りや異性を巡る戦いで、戦闘的で用心深さがない個体は、戦いすぎて疲弊してしまう。
アグレッシブな人間が多いと思われている欧米では、
過剰に戦闘的な人間の評価は芳(かんば)しくない。
ハリウッド映画の中で、
さまざまな業界で活躍する主人公たちが激しくライバルや上司と衝突するシーンがあるが、
現実では珍しい光景だから映画やドラマで取り上げて表現しているのだ。
自己主張が激し過ぎる人やすぐに感情的になる人は、
ビジネスパーソンとして未熟という烙印を押される。
むやみに戦わないほうが、
人生というサバイバルレースでいい結果を生むことがあるのは、
動物の世界でも人間の世界でも一緒なのだ。
田村耕太郎氏の『頭に来ても アホとは戦うな!』(朝日新聞出版)より
中国、韓国と日本の関係は非常にギクシャクしていますが、
日本は冷静であってと願います。