人並み外れて不器用である。
こんな仕事をしているから器用だと誤解されがちだが、とんでもない。
折り紙の鶴が折れない。
靴紐(ひも)が満足に結べない。
絵も非常に不器用な絵で、友人仲間と比較して一番下手である。
その僕が最近トイレットペーパーの三角折をはじめた。
誰でもできるが、ぼくがたたむときれいな二等辺三角形にならない。
しかしトイレを使用する度に練習した。
正確な二等辺三角形で先端がピシッととんがっている端正な形にはなかなかならなかった。
でも最近時々傑作ができる。
うーん、やった、美しい!
と思ってトイレの中でひとりで感動している。
馬鹿みたいですね(馬鹿ですけど)。
勿論(もちろん)公衆トイレ、ホテルのトイレ等々でも使用後にトイレットペーパーの三角折をする。
便座も拭(ふ)く。
後から使用する人が気持ちがいいだろうと思うとうれしい。
ところで高知新聞を読んでいると山の中の神社に放火したり、町の電飾を破壊したりという記事があって暗然とする。
ぼくは高知県生まれで、土佐人であることにプライドを持っている。
しかしこんな無頼な連中がいるとは信じられない。
恥ずかしくてたまらない。
古い奴(やつ)だとお思いでしょうが、人は人のためにつくし、人をよろこばせるのが最大のよろこび。
たとえばほんのトイレットペーパーの三角折でさえも...。
やなせたかし氏の『人生、90歳からおもしろい!』(新潮文庫)より抜粋
「人は人のためにつくし、人をよろこばせるのが最大のよろこび。」
住まいを通して、人のために尽くし、人を喜ばせたい。