親切にしたのに、恩を仇(あだ)で返される、約束したのに裏切られる...。
心の底から「くやしい!」と思ったことがあなたにもきっとあるはずだ。
そういう時は、どうした?
相手に何とかして「思い知らせてやりたい!」と思わなかっただろうか。
人間は「仕返し」をしたいと考える生きものである。
大きいことから小さいことまで、自分にイヤなことをした相手に「仕返し」をしたいと思うし、実際に仕返しする人もいる。
古今東西の小説でも現実の世界でも、「仕返し」という悲劇は生まれている。
なぜ仕返しを考えるのか。
それはスッキリしたいからだ。
でも、この「仕返し」ほど運を悪くさせることはない。
仕返ししたい気持ち、つまり復讐心は、
悪魔が仕掛けた大きく深い落とし穴といってもいい。
私の友人に、抜きん出て歌のうまい女性がいた。
才能を磨けば、一流の歌手になれそうなほどだったが、そのころ、彼女は両親との仲がひどく悪かった。
その両親は、彼女が聖歌隊に入ることを望んだ。
彼女自身も入りたかったのだが、彼女は親への反応が強かったので「思い知らせてやる」つもりで、とうとう入らなかった。
おかげで彼女は、持って生まれたすばらしい才能に磨きをかけるチャンスを逃した。
腹の立つ相手に「思い知らせて」やると、たしかに一時的には気分がいいかもしれない。
だが、結局損するのは仕返しをしたほうだ。
なぜ、そのことに気づかないのだろう。
私だって、頭にきているときには、相手をやっつけてやりたくなる。
だが、腹立ちまぎれの仕返しは、「自分のためにならない」。
一歩退いて、悪魔の落とし穴をよけて通ろう。
そうすれば「私は賢明で強い人間だ」と自信が持てる。
リチャード・カールソン氏の『運がよくなる77の方法』(浅見帆帆子訳)王様文庫より抜粋
人間の持つさがなのか。
気をつけたいものです。