ピンチは、その人の本質を浮かび上がらせます。
人間として未熟であり、まだまだ練られていない人は、どれだけ取り繕ってみても馬脚を現してしまうのです。
人は逆境にあるとき、自分に押し寄せる荒波に押されて、気も弱くなってしまいがちです。
しかし、忘れていけないのは、そんな時であるからこそ、見る人は見ているということです。
葉隠にはこうあります。
「成富兵庫など七度浪人したということである。起き上がり人形のように思わなければならない。主人も試すつもりで浪人を言いつけることがあるだろう」
成富兵庫とは佐賀鍋島藩の家老であり、加藤清正が一万石で召し抱えようとしたほどの人材です。
その成富兵庫にして、七度浪人した。
というよりも、浪人したからこそ、それだけの力を身につけたということなのかもしれません。
人事には当然ながら意図があります。
成長する部署につくものがあれば、反対に立て直しを図るための人事もあります。
本人にとっては、不本意に思えることもあるかもしれません。
しかし、そんな時だからこそ、見る人は見ています。
「やはり、そこまでの人材だったか」「なかなかやる。見直した」
どちらの感想を持たれるかは、その人の心がけ次第です。
調子のいい時は、誰でも頑張ることはできるのです。
逆境のときであるからこそ、笑顔で頑張る。その姿が人の心を動かすのです。
明治学院大学教授、武光誠氏の『「葉隠」に学ぶ誇り高い生き方』(成美堂出版)より抜粋
人が一番学びを得られるのは、体験、経験。それも、つらい、厳しいこと、と思う。