恥ずかしい話をします。
私は、若い頃、クレーマーでした。
レストランで食事をして、もし冷たいスープでも出されようものなら、文句を言って温め直してもらうほどでした。
大きなパーティの幹事をしたときには、ホテル側の接客態度が悪いと指摘し、料金を負けてもらったこともあります。
(今、思い出しても赤面です)
でもその後、態度を改めました。
それは、一流と呼ばれる人たちとお付き合いするようになり、客として「もてなされる側」の心構えを目の当たりにして学んだからです。
たとえば、一流のホテルマンは、ホテルに泊まるとき、決してお客様ぶったりはしません。
もしスタッフがミスをしても、「今度から気をつけてね」と笑顔で応えます。
「きっと夜勤で疲れていたんだろう」と慮(おもんぱか)る。
そもそもの根底が、「泊まってやる」のではなく、「泊まらせて」いただくのだと思っているからです。
タクシーに乗るときにも、「乗せて」いただく。
レストランで食事をするときにも、「食べさせて」いただく。
こちらはお金を支払うお客ではありますが、「○○させていただく」という姿勢を忘れません。
それはなぜか...。
相手の気持ちがわかるからです。
いつも、お客様をおもてなしするという仕事をしています。
それが、どんなに大変なことで、どれほど気くばりを必要とすることか身をもって知っているのです。
だから、どんなミスをしても赦(ゆる)してあげることができる。
仮に、どうしようもなく接遇の悪いホテルやレストランがあったとします。
そんな場合でも、彼らは「残念だなぁ。私ならこうするのに」と「気づき」と「学び」のいい機会として、サラリとやり過ごしてしまいます。
「お客様ぶらないようにする」ことは、人を思いやる心の原点です。
志賀内泰弘氏の『「また、あなたと仕事したい!」と言われる人の習慣』(青春出版)より
自分の前に現れることを、どう捉えるか、どう考えるか。