月刊誌『致知』の取材を通して、数多くの経営者に接してきたが、一業をなした人には、突出(つきだ)して二つの共通した要素があるのを感じないわけにはいかない。
一つは、「価値を見出す力」である。自分の置かれた環境、そこに結ばれる縁、たずさわる仕事等々に、多くの人はさしたる感興(かんきょう)も覚えず、それらはたまたまのもの、ありきたりのものと見なしがちである。
だが、一業を成した人はそこに独特の強烈な価値を見出すのだ。
もう一つは、価値を「信じる力」である。
京セラ創業時、セラミック製造の作業は埃(ほこり)まみれ泥まみれ、汚い、きつい、厳しいの典型的な3K職場であった。
若い社員の顔にはうんざりした色が浮かぶ。
深夜作業を終えると、そんな若い社員と膝(ひざ)を突き合わせてラーメンをすすりながら、稲盛氏は熱っぽく語り続けた。
自分たちがやっているのは世界の誰もやっていない仕事なのだ、自分たちは世界の先頭を走っているのだ、と。仕事に見出した価値。
それを強烈に信じていたのである。
そして、それば京セラのベースをつくったことはいうまでもない。
価値を見出す力。
その価値を信じる力。
これこそ信念の力である。
信じ念じる力が道のないところに道をつくり、人を偉大な高みに押し上げていくのである。
藤尾秀昭氏の『プロの条件』(致知出版社)より
自分の身の回りにあるもの、いる人、起こることそれにどんな価値を感じ、見出すのか、そしてどう行動していくのか