三月に東日本を襲った大震災は、日本国民の精神性がきわめて高いことを、世界へ向かって示した。
未曾有の天災だった。
それにもかかわらず、日本国民が、規律も礼節もいささかも失うことなく行動したことに、中国や韓国まで含めて、全世界が称賛している。
日本人の礼節が、世界から絶賛された。先の第二次大戦に敗れてから、日本が世界にわたって、これほど高く評価されたのは、はじめてのことである。
他の国々であれば、人々が平常心を失って、略奪が頻発するなど、治安が大きく乱れるものである。
日本が世界の手本になったと、いってよい。
全世界で、日本の被災者を援けようという、運動がひろまった。
私も海外の多くの友人から見舞いのeメールや、電話をもらった。
オーストリアの音楽評論家は、東日本大地震が発生してから、ウィーンで日本にかかわりがない三つのコンサートに出席したが、いずれのコンサートでも、演奏前に日本の犠牲者に対する黙祷(もくとう)が行われたことを知らせてくれた。
3年まえの中国の四川大地震では、8万人以上の死者と、多数の行方不明者が発生したのにもかかわらず、被災民を励まし、援けようという輪が世界にひろまることがなかった。
ふだん、貨幣価値によって計れるものが、いっさい流されて失われてしまうと、人の真価が試される。
津波によってすべてが押し流されてしまった時には、心しか残らない。
日本がしっかりとした、精神的な根を張っている国であることを、覚らされた。
日本人の高貴な精神は、先人たちの贈り物である。
そのような精神が、どのようにしてもたらされたか、その根がどこにあるのか、考えたい。
日本文化は、独特なものである。
日本人は古代から和の心を、保ってきた。
この和の心は世界のなかで、日本人だけが持っているものだ。
そこから、全世界が驚嘆した自制心、克己心、利他心、同胞愛が生まれてくる。
外交評論家、加瀬英明氏の『ジョン・レノンはなぜ神道に惹(ひ)かれたのか』(祥伝社新書)より
和の心、
「和をもって尊しとなす」ですね。