誰もが知るこの言葉
「初心忘れるべからず」 このことわざを聞いたことがない人はほとんどいないのではないでしょうか。
「物事に慣れてくると、慢心してしまいがちであるが、はじめたときの新鮮で謙虚な気持ち、志を忘れてはいけない」というような意味で使われています。
しかし、本来の意味合いは少し違っているようです。
このことわざは、室町時代に能を大成させた世阿弥であり、世阿弥の書「花鏡」の結びとして、
「しかれば当流に万能一徳の一句あり。 初心忘るべからず。この句、三ヶ条の口伝あり。是非とも初心忘るべからず。時々の初心忘るべからず。老後の初心忘るべからず。この三、よくよく口伝すべし」から生まれたそうです。
彼の言う「初心」とは「始めた頃の気持ちや志」すなわち「初志」ではなく、
「芸の未熟さ」、つまり「初心者の頃のみっともなさ」。
初心者の頃のみっともなさ、未熟さを折にふれて思い出すことにより
「あのみじめな状態には戻りたくない」と思うことで精進できるのだと考えたようです。
ひいては「物事に慣れてくると、慢心してしまいがちであるが、はじめたときの新鮮で謙虚な気持ち、志を忘れてはいけない」という解釈でいいのではと思います。
この言葉が、広く使われ知られている理由は、とかく人は慢心、傲慢になり謙虚さを忘れがちだからなのでしょう。
今日も「褒めらる仕事」を