曾野綾子氏の著書『思い通りにいかないから人生は面白い/三笠書房』の一節。
『三浦朱門の知り合いの青年が、高校時代にアメリカに留学していた時のことです。
高校の階段の手すりに腰を掛けて友人としゃべっていて、バランスを崩して転落してしまった。
頭のいい青年でしたが、典型的な優等生ではなくて、少しやんちゃな若者だったらしい。
彼は、その事故で車椅子の生活を送ることになりました。
それで母親が彼を日本に帰すか、アメリカへ行って面倒を見ようとしたら、本人は、「大丈夫。ぼくが全部一人でやりますから」
と言って、車椅子で大学を受験して入り、大学での生活もほんとうに一人で乗り切った。すばらしい人ですね。
その青年も、ケガをした直後は当然いろいろ悩んでいた。
その時一人のカトリックの神父が、彼にこう言ったそうです。
「ないものを数えずに、あるものを数えなさい」それは慰めでも何でもないと思います。
誰にも、必ず「ある」ものがあるのです。
でも、人間というのは皮肉なことに、自分の手にしていないものの価値だけを理解しがちなのかもしれません。
自分が持っていないものばかりを数えあげるから、持っているものに気づかないんですね。』
「ユダヤ人は足を折っても、片足で良かったと思い、 両足を折っても、首でなくて良かったと思う。
首を折れば、もう何も心配することはない」 こんなユダヤ人ジョークがあるそうです。
失ったものを数えない。残っているものを数える。