幕末のころ、土佐の檜垣清治という人が、
そのころ土佐で流行していた大刀を新調し、
江戸から帰ってきた坂本龍馬に見せたところ、
龍馬は、「きさまはまだそんなものを差しているのか。おれのを見ろ」と言って、
やさしいつくりの刀を見せた。
そして、
「大砲や鉄砲の世の中に、そんな大刀は無用の長物だよ」と言った。
清治は「なるほど」と気が付いた。
そこで、龍馬のと同様の刀をこしらえて、その次に帰ってきたとき見せた。
すると龍馬は、
「このあいだは、あの刀でたくさんだと言ったが、もう刀などは要らんよ」と言いながら、ピストルを取り出して見せたというのです。
またその次に帰ったときには、
「今の時勢では、人間は武術だけではいけない。学問をしなければならない。
古今の歴史を読みたまえ」と勧めたという。
さらにそのつぎに会ったときには、
「面白いものがあるぞ。万国公法といって、文明国共通の法律だ。
おれは今それを研究しているのだ」と語ったそうです。
清治は、「そのように龍馬にはいつも先を越されて残念だった」と人に語ったといいます。坂本龍馬という人はいつも先々を見ていたのですね。
そしてそういう、
現状にとらわれない、絶えず先を見るというような姿勢は、
素直な心が働いているから生まれてくるのでしょう。
世の中が凄まじい勢いで変化しているのに、
自らを変えようとしない人は必ず時代から取り残される。
しばらくぶりに会ったら…
見違えるように成長している人でありたいものです。